top of page

天外伺朗さんの講演

名古屋ワールド 2014年11月2日 国際デザインセンター

 

口羽和尚さんのご講演をうけて、天外さんのお話がありました。天外さんは、アメリカ先住民の長老たちとも親交が深く、天外さん自身が聖なるパイプを授与された長老でもあります。お話の一部をご紹介します。

 

表に出ている歴史と別に、表に出ていない歴史がある。表に見える社会の後ろに、だれにも見えない社会がある。――ぼくは、そんなふうに感じています。

心理学では、フロイトが、無意識といういわば「もう一人の自分」を発見しました。人間は、自由意思によって考えているというのは錯覚で、じつは無意識にひそむひずみに、人生を支配されています。

フロイトは、無意識を性的エネルギーのみと考えましたが、後年、心理学者たちは他にもさまざまな要素があることを指摘し、深層心理学が発展しました。

同じように、社会学の領域でも、いずれ深層社会学、深層歴史学と呼ばれる分野が、確立されるのではないでしょうか。

合理主義の範疇を超えているので、受け入れられるまで紆余曲折があるかもしれません。それでも、2,30年もしたら、そんな学問が生まれても不思議ではないと思います。

 

ぼくがそう考えるようになったのは、2年前、三重県の洞戸で、アメリカ先住民族の通過儀礼、ビジョンクエストをおこなったのがきっかけです。そのときサポートしてくださった神主さんから、たくさんのお話を伺いました。

ぼくたちは三日間、寝袋だけもって山の中にこもり、断食しました。マムシがいる場所だったので、神主さんがお浄めしてくださった石を並べて、結界を張りました。

ぼくはヒルに噛まれていましたが、結界を張ってからは、ヒルどころか蚊の一匹も入ってこないのです。これほどの強力な結界は初めてで、神主さんのお清めの効果だと思いました。

洞戸の船戸クリニックの前に神主さんが作ったストーンサークルがあったのですが、石の組み合わせでエネルギーを調整するという、古代人のノウハウを身につけておられることに、本当に驚きました。

その神主さんが語られたことの一つが、怨念の封じこめについてです。口羽和尚さんがお話しになられたように、その神主さんも、「ヤマト民族は東北を鬼門と称し結界を張り、「戸」と名付けた地名に虐殺したアイヌの怨霊を封じてきた」と、指摘されました。

アイヌの長老、アシリ・レラさんは、「コシャマインやシャクシャインなどのアイヌの英雄は法力が強く、洪水を起こして敵軍を全滅させる力もあった」と語っています。ヤマト民族は、和平と見せかけて彼らを呼び寄せ、毒殺しました。 当時の日本では、それは当たり前の風習だったのですが、アイヌにはだますという風習がなかったので簡単に殺せたのです。

いまの価値観で裁くことはできませんが、だまし合いをしなかったアイヌ社会のほうが、人間としては上等のように、ぼくは思います。

そして、ヤマト民族は、東北に結界を張ることで、虐殺したアイヌの怨念を封印し、結界を張って、生きのびてきました。

いま、その封印がほどかれ始めています。神戸の地震や東日本大震災も、封印をとく役割があった、と神主さんはおっしゃっています。

 

口羽和尚さんには、五月の剣山ツアーで施餓鬼供養をしていただきました。

剣山ツアーは、アメリカ先住民族のホピの長老が、剣山で平和を祈るパイプセレモニーをするので、一緒に祈ろう、と誘われたのがきっかけです。

剣山には、ユダヤにまつわる伝説があります。山頂付近の土地はユダヤ系の銀行が買い占めていて、イスラエル大使は日本に赴任すると必ず、剣山に登るそうです。

結局、ホピの長老が来日する計画は、アメリカ側の事情でとん挫し、セレモニーは中止になりました。ただ、どういう流れか、来られなかったホピの長老のかわりに、ぼくが剣山でパイプセレモニーをおこなう、というふうに話が進んでいったのです。

剣山の山頂で、口羽和尚さんがみんなのお弁当の一部を集めて供養を始めると、明らかに空気が変わりました。黒雲が押し寄せてきて、ぼくは気分が悪くなったり、咳が止まらなくなったりしました。

成仏していない霊が、ものすごくたくさん集まってきたわけです。これは大変なことだ、とわかりました。

ぼくの家の菩提寺は臨済宗で、施餓鬼供養というと、先祖供養を意味しています。先祖を餓鬼と呼ぶことには抵抗がありました。ただ、和尚さんの施餓鬼供養は、まったく違うものでした。成仏していない霊を、呼び寄せて成仏させる儀式のようなのです。

 

アメリカ先住民族も、白人によって、虐殺を経験しています。

もう亡くなりましたが、ウィリアム・コマンダーさんという、アメリカ先住民族の長老がいます。コマンダーさんが来日して、部族に伝わる「セブン・ファイアーズ」の神話について語ったことがあります。

アイヌの長老、アシリ・レラさんは、その話を聞いたとたん顔色を変えました。「まったく同じ神話が、アイヌにもある。アイヌでは<七つの星>と言っている」と。

コマンダーさんは、1960年ごろ癌になり、命が危ぶまれたとき、長老にこう諭されました。「おまえの心には、白人に対する強い恨みが見える。その恨みが、癌を引き起こしたのだ」。

アメリカ先住民族の伝統は、「すべてに感謝する」というものです。太陽、月、空気に感謝し、あらゆる生きもの、食べもの、水など、すべてに感謝の言葉を述べていくのが、彼らの祈りです。動物たちは、大地がつくりだした人間のきょうだいです。

「すべてに感謝するのが、私たちの伝統だ。確かに、白人はひどいことをしてきた。だが、それすら創造主のおぼしめしだ」という教えに、コマンダーさんは深く感じ入りました。そして、毎日伝統的な祈りを続けるうちに、癌は消えたのです。

当時、1960年代は、アメリカ先住民族の権利をめぐって、武装闘争が続いていました。コマンダーさんはアメリカ各地を回り、武装蜂起をやめるよう説得しました。彼の尽力がなかったら、内戦で数万人が命を落としていたかもしれません。

コマンダーさんから聖なるパイプを授けられ、長老となったのが、トム・ダストゥーさんです。トムは、アメリカ政府が先祖の墓所をダムにしようとするのに抗議し、ウォー・チーフ(戦闘隊長)に選ばれていました。

しかし、トムは霊感が強く、戦うなら何万もの命が失われるビジョンを見ていました。そんなとき、日本山妙法寺のジュン庵主さんが、トムに「武装闘争はやめて、ピース・ウォークをしましょう」と諭したのです。

ジュン庵主さんは、アメリカ先住民族の権利闘争をサポートし、何度も投獄を経験して、深く敬愛されていました。

ジュン庵主さんの提案を受け入れ、彼らは真冬に数か月かけて、ボストンからカナダまで、平和の祈りをこめて歩き通しました。そしてトムは、ライフルで戦うだけが戦いではない、と気づいたのです。

 

日本山妙法寺は、平和運動に取り組んでいるお寺です。

日本でのピース・ウォークにトムが参加したとき、「先住民族であるあなたたちが、アイヌを抑圧してきた日本人と一緒に行動するのはなぜか」と、アイヌの人に詰問されたそうです。

しかし、スウェットロッジという浄化のセレモニーをおこなうなど、行動をともにするうちに、その人も心を開いてくれました。そして、妙法寺のお坊さんたちといっしょに北海道各地を回って、浄霊の儀式をおこないました。

儀式に立ち会ったトムは、「木の鎧を着たアイヌの兵士が、何百人となく上にあがっていくのが見えた」と語っていました。

 

このエピソードは、『宇宙の根っこにつながる人々』という著書で、紹介しています。それを書いた当時は、「霊」という言葉は、あまり使いたくないと思っていました。

「あの世」というと、霊界を想像する人がほとんどです。けれど、広大な「あの世」において、霊界はごく表面的なものにすぎない、と考えていたのです。

とはいえ、このところのさまざまな展開を思うと、その話題をもう避けて通ることはできない、という心境になりました。

アイヌについて、どんな虐殺があったのか、どういう怨念をどれくらい封じたのか、詳しいことはわかりません。ただ、このまま放っておかないほうがいい、と感じています。

レラさんは、「アイヌの怨念を封印したのは空海だ」と言っています。

最近、真言宗のお坊さんとご縁ができ、封印をとく話が続いていることを、とても興味深く思います。ぼくは、2016年から、「日本列島浄化作戦」をスタートしたいと考えています。 

 

文責 矢鋪紀子

 

bottom of page