天外 伺朗さんのお話
天外さんのお話
阿闍梨の修行のお話を受けて、天外さんからこんなお話がありました。
だいぶ前の話ですが、ゴールデングローブ賞をとった日本ハムのヘッドコーチ、白井一幸さんが来られ、大変な問題を打ち明けられました。高校生のお嬢さんが脳幹に腫瘍ができて、歩けない、言葉が出ない、治る見込みがないと言うのです。腫瘍の場所が場所だけに手術もできないので絶望的でした。それが、たまたま柳沢慎吾阿闍梨の出版記念パーティーの席上でした。これは阿闍梨と深いご縁がある、と思ったので、阿闍梨に病院で拝んでいただくようお願いしました。阿闍梨は脳の病気なので脳天神社で拝んだほうが強力だと言われるので、情報だけをお伝えしました。すると、たちまちのうちにそのお嬢さんは歩けるようになり、お話もできるようになり、良くなっていったのです。1年近くは勉強することさえ困難でしたが、回復して、頑張って、浪人もしないで上智大学に合格しました。脳腫瘍が完全に消えるまでに6年かかりましたが、本当に良くなりました。祈りの力のすごさを実感しました。
ただ、祈りの力が強くなったらいいかと言うと、そうではない。本当の意味で修行しないと、ろくなことが起きないと思います。
天外塾では「感じる」ことに集中する練習をします。
自分自身を客観的に見る「鳥の瞑想」があります。良い悪いの判断をしないでいつも自分を見るということですが、メタ認知を発達させる練習になります。すったもんだの自分をちゃんと客観的に見ていく方法で、ちょっと宗教的な修行に近いものがあります。
塾生が深刻なトラブルを抱えていると、様々な瞑想の宿題が出され、首尾よくいけば意識の変容を起こします。たとえば、どうにも嫌な相手に対する感謝の瞑想というのがあります。コツは、瞑想に入って、心にもない感謝を言うこと。心から感謝すると三日も続きません。だから、瞑想中に「お前のおかげでひどい目にあった」と祈り、いやな情動をたっぷり味わいます。そのあと、「お陰で俺は強くなりそうだ。どうも有難う」などと感謝の言葉で締めくくるのです。それを1ヶ月間朝晩やると、心にもない感謝が、いつしか心からの感謝に変わることがあります。そうすると葛藤がほぼ解消しています。これは、自分の内側でやっていることなのに、外側の世界までもが変わってくるのです。
離婚し、子どもにも会えず、奥さんを憎んでいる塾生がいました。宿題として、奥さんに対する感謝の瞑想をし続けたわけです。1ヶ月もすると憎しみが消え、口先だけの感謝が心からの感謝に変わり、葛藤から抜け出ていったのです。すると、いろんな出来事が生じてきました。たとえば、5、6年も会えなかった子どもに街中でばったり会ったりします。内側の宇宙と外側の宇宙はリンクしているということです。
嫌な情動がちゃんと出て、それを受け止めると、葛藤が解消されます。
普通は1ヶ月くらいかかって、うまくいくかいかないか、という感じですが、ときには3日ぐらいで抜け出られる人がいます。その人は祈りの力が強いと言えます。祈りの力が強すぎると、問題です。そういう人は大体とても大変な人生を歩んでいます。祈りの力と人間性のバランスが取れていないからです。ちゃんと修行して祈りの力が強いといいのですが……。
私がインディアンの長老から「聖なるパイプ」をいただいた時に、こんなことを言われました。
このパイプを持って祈ると、祈ったことが全部実現する。ただ祈りが全て実現するというのはとても危険なことなのでで、感謝以外の言葉を口にするな、と。その長老もパイプを受け取るときに同じことを師匠から言われたそうです。
偉大なる師匠、ウイリアム・コマンダ大長老が1977年に来日した時、ガンになった若き日のことを話してくれました。先住民の祈りでは、「レラティブズ」(親戚という意味)という言葉で、植物や動物、石までも人格化し、すべての生き物に感謝の言葉を捧げて祈ります。にもかかわらず、彼は白人を憎んでおり、除いていました。長老はそれを見破り、「お前がガンになったのは白人に対する憎しみが原因だ」と、若きコマンダを諭しました。白人といえども母なる大地が生み出した我らの兄弟なのだからと。彼は改心し、本当の感謝の祈りをしていくと、ガンもいつしか消えていました。
すべてに感謝すると感謝すべきことしか起こりません。それがパイプをいただいて祈りを続けていってわかったことです。すべて感謝の言葉に変えてお祈りをする。これほど強力な祈りはありません。