船戸崇史さんの講演録

「船戸崇史さんと天外伺朗さんのジョイント講演会IN名古屋」は、来年1月「リボーン洞戸」開業に向けて、ひとあし早い前夜祭でもありました。
 リボーン洞戸はがん治療に関わってこられた船戸崇史さんの夢の集大成であり、<がんの体験を通して「自らの生き方を変えたい」と願う人のためのリトリート施設です。なぜこの時代に生まれてきたか、本当は何をしたいのかという、本来で本当の自分に気付ける事を目標としています>(公式サイトhttp://www.funacli.jp/horado/ より)
 ご講演中にはビデオ上映もありましたので、内容はまとめてご紹介します。
(10月9日、名古屋企業福祉会館)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 24年前、ぼくは船戸クリニックを開業しました。自分の家で生きて、自分らしく死んでいく。「自分らしく逝けるサポート」「人生をサポートする医療」をスローガンに、在宅医療や末期医療に取り組んできました。
 ぼくはがん治療をライフワークとしており、自分自身も48歳で腎臓がんを体験しました。腎臓がんは初期症状がなく、気づいたときは進行していることが多いです。ぼくの場合は、人間ドックで早期発見でき、腎臓摘出手術を受けました。
 それから、がんを再発させないように生活を改善してわかったポイントをまとめ、患者さんの指導に生かしています。
 ぼくは長い間がんと付き合って、この頃ようやくがんの言い分がわかってきたと感じます。がんは、「本来の自分らしく変わりなさい」「本来の自分として生きなさい」と伝えているのです。
 とはいえ、患者さんに「このタイミングでがんになったのは、これまでの生き方にも原因がある。そこを見なおしてみましょうね」と外来でご説明しても、ご自宅に帰ると、それまでの生活習慣に戻ってしまう患者さんも多くいます。
 リトリート施設でゆったり過ごし、暮らし全般を見直すことで、本来の自分に生まれ変わり(リボーン)をとげられる場所を作りたい・・・ぼくはそう願うようになり、「リボーン洞戸」を開業することにしました。
 ぼくたちは、本来の自分として生きるために、この世に生まれてきたのです。夢をこういうふうに形にできるのは、とてもありがたいことと感謝しています。

―― ぼくの医師としてのスタートは、消化器外科医でした。外科医らしく、ぼくは手術で患者さんを治すのだ、と考えていました。
 しかし、それは大きな傲慢であることを教えて貰う出来事に遭遇しました。外科医になっても間もないころ、盲腸の手術をした小学校1年生の男の子が、「感想文です」と手紙をくれたのです。三角形の下に「メス」、長四角の下に「ちゅうしゃ」、四角に線がついたイラストに「てんてき」とあり、「どれもぜんぶこわかったです」とありました。
 大きなショックを受けました。ぼくは手術前、小さい子にはわからないと思いこみ、お母さんばかり見て語っていたのです。子供にも等身大の恐怖心があったのです。「申し訳ない」と思いました。それから、ぼくは子どもにも治療の話をして、感想文を書いてもらうことにしました。すると、もっと大きなショックを味わう事になりました。感想文には、○○看護師さんが優しかったとか、注射が痛かったとか、友達のお見舞いが嬉しかった、といった感想がほとんどで、「先生ありがとう」という言葉は、付けたしのように最後に少し記されるばかりでした。

「手術したのはぼくで、治したのはぼくだ」「だから一番感謝されるのはぼくのはず」と思っていたのですが、ただの傲慢でしかなかったのです。何という事でしょうか!
 その後、消化器外科ゆえに出会う事になったがん患者さんとも、わたしたち外科医は切除して治すという目的があります。それは、がんが命を奪う憎き敵だからです。しかし、がん患者さんの中には、「がんちゃんのお蔭で・・」と感謝される人もいる事に驚きました。しかも、「がん」と呼び捨てにせず。「がんちゃん」と擬人化さえするのです。なぜしょうか?それは、がんになったお蔭で自分の命の限界が見え、その結果、生き方を変える事ができたと喜ばれたからなのです。これが、「がんは治す」ための対象でしかないという考えは、間違いではないかと思い始めた体験でした。
 ―― 西洋医学のがん治療は、手術、放射線治療、抗がん剤が中心で、今あるがんの大きい塊を一気に小さくするには、きわめて優秀です。
 ただし、抗がん剤はがん細胞だけをターゲットにするのではなく、全身に回るために、全身にダメージを与えます。正常細胞やリンパ球にもダメージを与え、精神的にも緊張を促して交感神経を活性化するので、免疫活性を下げるという点で、もろ刃の剣です。抗がん剤は、有効な治療法ですが、重要な事はいつ中止するか、誰が判断するかが求められると言う事です。
 じつは、体には、治すしくみ、治ろうとするしくみがあるのです。がんを作る要因の一つに過剰な活性酸素がありますが、正常細胞はこの活性酸素により遺伝子が傷つき、これが原因で癌化すると言われています。この傷を修復するのがHSP(ヒート・ショック・プロテイン)で、熱を加えると活性が高まるのでこの名があります。同様にDNA修復や、がん細胞が増殖するのを抑え、異常細胞を最期アポトーシスに導く機能をもつ、p53遺伝子という遺伝子もあります。その働き上、最後の砦といわれます。
 通常、ぼくたちの身体の中では1秒間に500万個の細胞が入れ替わっています。しかし、30秒に1個、つまり1億5000万個に1個の割合で、上記のがんにならない仕組みの隙間からコピーミスが起きます。それががん細胞です。がん細胞には特徴があって、亡くなられた新潟大学安保教授によると、がんは低酸素と低体温、そして高血糖と言う環境が大好きで、それを促す生活習慣はがん発生のスピードも10倍にまで上げると言われています。安保先生は、がんの原因はこの間違った生活習慣にあるとまで言われているのです。ぼくは、その生活習慣を5つにまとめました。あとからもう少し詳しく述べますが1、睡眠不足、2、間違った食習慣、3、冷えのある生活、4、運動不足、5、笑顔のない生活です。この生活習慣でがんはどんどん大きくなることになります。

 しかし、ぼくたちはこうしてできたがん細胞を抑える仕組みもあります。それが免疫で、その主体はリンパ球です。特にナチュラルキラー細胞やCTL(組織障害型リンパ球)というリンパ球が、こうしてできたがん細胞の増殖を抑え排除します。ぼく達はこの免疫のお蔭で実は全てのできたがん細胞を消しているのです。

―― つまり、がんを増やさないためには、免疫活性を上げることが大切なのです。
 がんと戦うリンパ球は、白血球の一種です。白血球にはいくつか種類があり、リンパ球のほかに、細菌と戦う顆粒球もあります。ふつうに食事をするだけで、私たちの体内には大量の細菌が入ってきます。人類史において、生命を脅かしてきたのはがんよりも細菌であり、顆粒球は重要な役割を担ってきました。
 ところが困ったことに、同じ白血球であるにもかかわらず、顆粒球はがん細胞の増殖を煽る作用があるのです。
 では、リンパ球と顆粒球の役割分担はどのようになされているのか。これも安保先生が発見されたんですが、じつは、リンパ球は副交感神経が優位なときに働き、顆粒球は交感神経が優位なときに働くようになっています。つまり、時間帯でいうと、副交感神経が優位になる夜はリンパ球、交感神経が優位な昼は顆粒球が活性化する事が明らかになりました。
 夜しっかり眠って、副交感神経を優位にすることは、リンパ球を活性化することになり、がん治療につながるのです。つまり睡眠は抗がん剤だったんです。

―― 自律神経をより高位で支配するのが、精神の働きです。精神とは大きく分けて安楽と緊張とありますが、副交感神経は「安楽」な状態で活性化する一方で、「緊張」は交感神経を活性化します。ですから、がんを抑制するには「安楽」⇒「副交感神経活性」⇒「リンパ球活性」⇒「がん抑制」の仕組みがあったのです。直接がんを退治しなくとも、安楽な気持ちはがん治療になると言う事です。
 ところが、この安楽な気持ちを邪魔する要因が3つあります。
 一つは痛みです。進行がんの70パーセントに起きる症状です。
 二つめは不安。がんの進行や転移があるとき、心穏やかでいることは難しいものです。

三つめは「寝ない」と言う事です。例えばシフト勤務です。欧州では夜勤が続きがんになると労災適応になる国があるほどです。

この様に、本来眠るべき時間の夜中に、痛みや不安、仕事で目が覚めた状態が続くと、副交感神経の活性時間が短くなり、延いてはリンパ球の働く時間が短くなります。そして替わって交感神経が優位になって、顆粒球が増えてしまいます。怪我しているわけでもなく、戦う相手の細菌がいなくて手もちぶさたになった顆粒球は、がんを煽ってしまいます。
 こういった要因をいかにとり除き、安楽な気持ちを保てるようにするかが、免疫活性を上げるために大切です。

―― ぼくは、がんを作らない、大きくしない、増殖を抑えるための生活習慣を、5つのポイントにまとめました。それは、「よい食事をとる」「体を温める」「運動する」「よく笑う」「しっかり眠る」の5つです。順を追ってご説明しましょう。

 一つめのポイントは、よい食事をとることです。
 ぼくは腎臓がんを体験して、それまで不規則だった食事を改めました。これは一つの例ですが、ぼくの朝食は、納豆とメカブです。大豆に含まれるイソフラボンは制がん効果が高く、しかも発酵していると消化吸収されやすくなるので、胃腸にもやさしいです。メカブにも、制癌効果の高いフコイダンという成分が含まれています。
 ジューサーでしぼったニンジンジュースも飲みます。材料は、ニンジン3本、リンゴ1個、レモン半分。ニンジンに含まれるベータカロチンは、がんの原因の一つとされる体の酸化を防ぐ働きがあります。ニンジンだけだと飲みにくいですが、リンゴとレモンを入れると口当たりがよくなります。

食事は身体そのものです。丈夫なリンパ球を造るには正しい食事や食習慣が大事だと言う事です。

 二つめのポイントは、体を温めることです。
 冷えのある生活は、交感神経を活性化し、体を緊張させて、リンパ球の活性を落とします。リンパ球活性は、体温が1度下がると40パーセント下がり、逆に1度上がると40パーセント上がります。

ですから、冷えのない生活は重要です。例えば、ぼくは夏でも靴下をはきます。それは冷えは足もとから入ってきて体温を下げるからです。冷えは、がんを作り、できたがんを大きくして、治す仕組みを抑え込んでしまうようなものです。
 足を冷やさないためには、くるぶしから5,10センチ上まである靴下がお勧めです。足首を出す短い靴下は今どきのファッションですが、感心できませんね。


 三つめのポイントは、運動です。
 運動と言っても競技ではありません。歩く程度の有酸素運動です。出来るだけ歩いて筋肉がつくと、体温が上がります。がんを消す主役のリンパ球は、体温が上がると活性化しますから、筋肉をつけて体温を上げることは、免疫を上げることにつながります。そして、がんの嫌いな酸素が一杯はいってきますし、食事で入った糖質もがんへ行く前に筋肉が消費してくれます。運動は一石三鳥なんですね。
 ぼくは往診先の少し前に車を停めて、なるべく歩くようにしています。生活の中に、無理なく続けられる運動をとり入れることが大切です。

 四つめのポイントは、意識して笑うことです。
 笑うと、がんを抑えるホルモンが分泌され、リンパ球も活性化します。笑いは大きい呼吸法のようなものであり、運動以外で体の酸素化には、できるだけ声を上げて笑うといいでしょう。
 因みに一人でも笑うコツがあります。笑いは伝染するので、笑っている人の顔を見ると、自然に笑えてくるものです。それなら、自分が自分を感染させればいいのですから、鏡を見ながら、「あはははは」と声に出して笑うと、そういうことをしている自分に笑えて、一人でも大笑いできます。

 五つめのポイントは、しっかり眠ることです。
 がん細胞を消すリンパ球は、副交感神経が優位な夜に働きます。通常でも一日に5000~6000個のがん細胞が出来てしまうので、それを消すには、少なくとも6時間は眠らなくてはなりません。
 ぼくは出来るだけ12時前には仕事を切り上げて床に就き、朝は6時半までは眠るようにしています。
 夜に眠らないというのは、体にとって悪い影響しかないのです。
 睡眠=自然治癒力ほど、睡眠は最も大切です。逆に睡眠不足ほどがんになりやすい。ぼくが腎臓がんになった一番大きな原因だと思っています。
 ぼくたちは、体をいたわって暮らすことが大切です。けれど、多くの現代人のライフスタイルは、その正反対ではないでしょうか。
 ジャンクフードを食べながら、エアコンの効いた部屋に閉じこもり、むっつりした顔で、コンピューターに向かって夜更かしする・・・そんなライフスタイルは、正常細胞にストレスを与え、がん細胞を作り増殖を煽り、がんを抑える仕組みを狂わせてしまいます。どこかで切り替えて、生き方を変えていく必要があります。

しかし、驚いた事に日本にはそうしたがんのための施設がないんですね。だから、ぼくは造る事にしました。先にも書きましたが、がんは「本来の自分に戻りなさい」と言っている病気です。ぼくは、本来の自分に生まれ変わると言う意味で「リボーン Reborn」と言っています。ぼくの故郷である、岐阜県関市洞戸に平成30年1月23日にオープンさせます。宣伝で恐縮ですが、「リボーン洞戸」という所謂リトリートです。がんに関心のある方、是非おいで下さいね。

―― さいごに、ぼくの著書を紹介します。
 『また遭おう』は最初の著書で、開業してからの雑感です。たとえ病気が治らなくても幸せな気持ちでこの世を去ることができる、そんな気づきを記しました。
 『ステップ・トゥー・ザ・ヘブン ~天国への階段~』は、心に残った10人の生きざまを綴ったものです。ぼくひとりの記憶にとどめるには、あまりにもったいなかったからです。
 『奇跡の医療』には、在宅医療や介護についても記しました。ぼくは「奇跡の医療」とは、病気を消すことではなく、病気の原因(理由)を消すことだと考えています。本来の生き方に気づき、生き方を変えるための医療的サポートこそが、奇跡の医療なのです。
 ご関心あるかたは、ぜひお読みください。
<会場からの質問> 朝食について。朝食は必ずとったほうがいいでしょうか。
―― 体調を崩すと「おいしいものを食べて眠ること」が常識になっていますが、2300年前、医聖ヒポクラテスは「病気になったら食を抜く」と指導しています。
 動物は病気になると、食べなくなります。これは、体のエネルギーが消化に回るのを防ぐためです。私たちも体調が悪いときは食欲が出ませんし、それが自然な反応なのですから、むりに食べなくていいのです。
 あえて食べないことによって健康をまもる、という考えもあります。特に、朝は浄化、排出の時間帯なので、朝食を抜くというのは、お釈迦さまの時代から健康法とされていました。ぼくが野口法蔵先生に教わった「半日断食」では、前日6時までに軽く夕食をとり、朝食を抜いて、お昼は12時すぎにご飯と梅干しで軽くすませます。
 ただし、学校では「早寝・早起き・朝ごはん」というフレーズがよく言われ、子どもたちは「朝ごはんはしっかり食べよう」と教えられます。子どもにとって、朝ごはんは家族との大切なコミュニケーションの時間になりますから、その意味では、朝ごはんをとるのは、決まった生活習慣を造る、家族とのコミュニケーション、ご家族への食事と会話の重要性の啓発と言う意味では良いのかなあと思います。

最期に、どうぞ皆様、5つの生活習慣をがんを治す為だけではなく、がんにならない生活習慣として早速始めてみて下さいね。重要な事は実践ですから。

★船戸崇史さんプロフィール:
船戸クリニック院長。岐阜県生まれ。愛知医科大学医学部卒業、専門は消化器腫瘍外科。1994年、岐阜県養老町に「船戸クリニック」開業。西洋医学だけでなく、東洋医学やホリスティック医学を取り入れて診療している。在宅医療にも力を注ぎ、在宅での看取りも多い。2018年、全人的医療をめざすリトリート施設「リボーン洞戸」開業予定。船戸クリニック公式サイト http://www.funacli.jp

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