top of page

バッチ博士は魔法使いだった

 

                        

 

 

 

 

 

               清水義久さん(2014/9/18 銀座RAJA)

 

 エドワード・バッチ博士が作った「フラワーレメディ」という治療薬があります。世の中にフラワーエッセンスと称し、花のエネルギーを使って、様々なものが作られているのですが、ダイレクトに治療薬とうたっているのは、おそらくエドワード・バッチ博士が作ったこの薬しかないでしょう。これは花の治療薬です。

 そして、作り方を見ると、本当にエネルギーしか入っていません。30mlの小さな瓶のなかに2滴の原液が入っているだけで、残りは水で薄めてあります。物質としたら限りなく何も入っていません。顕微鏡で見ようと物質を定量分析しようと、科学的にはただの水です。全部で38種類。でも、使ってみると、劇的に効くのです。

 

 バッチ博士がこのフラワーレメディを開発するきっかけとなった話です。

 イギリスの医師だったのですが、病気になり、西洋医学の療法ではもはや回復が望めないほどの状態で、余命数ヶ月の診断が下ります。彼は病院を辞め、実家のあるウェールズで残された短い余生を送ろうと、全財産を整理し、ひとつのトランクに詰めてウェールズに戻ろうとします。ところが、トランクを間違えて持って行ってしまうのです。それは全く同じ外見のトランクで自分の捨てるための靴が入っていました。ロンドンの駅でさあ乗ろうと思ったら、財布無しの無一文。財産は全部捨ててきてしまったのです。

 そこで、彼は、ヒッチハイクと歩きでウェールズに帰ろうとします。その時に、道ばたを歩いたり、野原を横切ったりして故郷に向かうんですが、野宿しないといけません。食べ物もないわけですから、ある草を取っては、これは食べられるのかなと手当たり次第食べたり、あるいは吐いたりして、だんだん植物のことが分ってきます。家にたどり着く一ヶ月くらい前には、なんと超能力が目覚めてしまった!

 東洋医学の『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)に名を残している神農は、草とか木の芽とかを口に入れて、毒に当たりながらも、これは漢方薬になる、ならないを選んだという伝説があります。バッチも同様の体験をしたといって良いかもしれません。

 

 ウェールズのバッチ博士の家族は彼がガンを宣告されて助からないということを知っています。また彼自身も死ぬためだけに家に帰るということはつらいものです。また家族も彼を看取らないといけないわけで、ウェールズに着いても本当にいたたまれない状態です。

 バッチ博士は翌朝起きると、家の裏庭から続いた河原に行き、ただじいっとそこに横たわります。

 「ああ〜、何のために生きているんだろう、自分はどうして一人で死なないといけないのかなあ」と考えていたのでしょう。

 そのとき、川のほとりに咲いていた一つの花がバッチ博士を癒し始めるのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

「エドワード、だいじょうぶよ」

 彼はそのとき、死ぬことの恐怖が癒されたことに気づきます。この河原でこの小さな黄色の花を見るだけで、自分は死からの恐怖から逃れていると。

 その超感覚的センス、エネルギーの知覚により、ひとつの黄色い花がバッチ博士に対して、何かオーラのようなものを出しているのがわかったのです。その結果癒されていることに気づいたバッチ博士は、その黄色い花を手折り、自宅に持ちかえり、飾ってみるともっと気づくことがあったのです。この花を挿しているコップの水に同じエネルギーが入っている。その水を飲んでみると、その花を見たり触ったりした時と同じように、死んでいく恐怖が消えていく。

 これが物語の始まりです。

 心を治してくれる花がある。この発見は史上初めてのことです。人間の心を直接治すことができる薬の発見!向精神薬や鬱病治療の薬でも、根源的に人間の精神を整える薬はいまの世の中には新薬として存在していないといっても良いでしょう。症状を抑えたり、化学物質で何かを和らげたりすることはできるでしょうが、恐怖、怒り、悲しみ、というような人間の精神波動を直接消すことのできる薬はまだ無い、と思われています。

 実はあるんです。このバッチ博士のレメディという薬です。

 これは人間の心を直接癒してくれる波動の発見で、気のエネルギーによって人間のマインドを調律する薬の発見です。

 翌日、バッチ博士は同じように河原に行き、恐怖が消えて、次に出てきた症状は怒りでした。「何でこんな病気で死なないといけないのか」というイライラ感、憤りがきゅっと出てきたのです。何かに対しての爆発的な怒りではなく、どうして病気で死ななければいけないのかというイライラした気持ちです。

 でも、それを治すためのもうひとつの花が隣に咲いていた。インパチェンスという西洋ホウセンカの花が「怒らないで・・・」と、バッチ博士のイライラを沈めてくれたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、恐怖が消え、イライラが消えたあと、現実逃避の感覚、自分に対しての無関心、どうでもいいやという感覚が出てきたのです。余命数ヶ月も残されていない時に、死ぬことへの恐怖はなくなったかもしれないけれど、病気は治っていないわけですから、この現実から自分が分離した感覚があったわけです。

 それを治してくれる薬が河原にまた生えていた。クレマチス。自分への無関心、あるいは分離した感覚を癒す花です。そして、またバッチ博士は癒されてしまったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この3種のレメディが最初の発見となりますが、これによってバッチ博士は自分の症状が消えてしまったことを知るわけです。つまり、肉体に対して何らアプローチをとっていないにもかかわらず、この3種類の花を摘み、目で見て、コップに活けて自分の近くに置き、毎日毎日その河原に行き、自然に咲き誇っているそれらの植物となじむことによって、余命数ヶ月と宣告されていたのがいつのまにか、「あれ、俺死んでいない!」ということになり、そしてこの3種類をきっかけに本格的に植物の探求に入ります。後で考えてみると、この3種類の花がバッチ博士の庭にあったことは、おそらく必要必然の定めだったのでしょう。

 

 僕は、バッチ博士が大好きなんです。

 世の中には色んなお医者さんがいますが、彼は「その方が助かりますように」と全力をそそぎ、本当に人の為に奉仕をし、見返りを求めることなどまったくなく、そのまま亡くなられた。こういう人がいたらお会いしたい。

 バッチ博士はレメディを開発して、世界中にレメディを売り出しましたが、生涯一銭もお金を取っていません。一銭もです。このかたはイギリスで活躍されましたが、レメディが評判になって、ブラジルとかアルゼンチンから注文が入ると無料で送ります。輸送費もレメディが入っているガラスのボトルも全部ただなんです。そして、自分が死ぬ時には着ている背広と靴しかもっていなかった。凄くないですか!

 それから、ぜひ一度、バッチ博士の写真を見つけて、顔を見て衝撃を受けて欲しい。人は浄化され進化すると、こういう顔になるのかという人間の変化が本当に起こります。バッチ博士が病気になっているときの顔は皺だらけでおじいちゃんのようです。人に対してモノを投げたりどなったりするような性格だったとも伝えられています。でも、レメディが完成し、死ぬ時は聖者のような顔つきになっている。皺ひとつない。超能力者になっていたのです。

 

完全なレメディ

 レメディを発見していく物語自体が魔法で構成されています。そのことを世界中のプラクティショナーはあまり指摘していません。

 まず、バッチ博士のフラワーレメディはこうやって作られていった「気」の薬であることは間違いないのですが、僕にはいくつか気になった点があります。

 誠実なバッチ博士が「これは人類が体験した初めての完璧な治療薬である」と断言したことです。それから、「もはやレメディは完成したので足さなくても引かなくても良い、すべて揃った」と断言し、力尽きたかのように翌年に亡くなるのですが、余命数ヶ月といわれてから20年生きたのです。死を宣告された病気は治ったともいえます。

 しかし、彼はこのレメディの症状に対応する病気に次から次と罹っていくわけです。ある時は失明したり、ある時はガンになったり、ありとあらゆる病気になっていくんです。両目が見えない状態で次の薬を発見し、飲むとシャキーンと見えるようになってしまう。彼は結果的に、生涯賭けて38種類のレメディを作ったのですが、さらに作っていく途中で、レメディは完成されたものということで無料で配布していきます。しかし、その誠実なバッチ博士は完成したレメディを完全なものだと断定する理由をどこにも書いていないのです。そしてこのことを世界中のだれもが指摘していない。

 気になりました。なぜ菩提樹が入っていないのか、なぜロータス、蓮の花が入っていないのか。ローズさえ入っていない。今言ったのは、東洋の聖花である蓮の花、西洋の魔術の聖花であるローズ、そして仏陀が悟りを開いた時の菩提樹です。菩提樹の実は小さくお数珠になっていますので、その素晴らしい波動は世界中の人が分っています。そして超能力を得たバッチ博士がこの3種類をはずしている理由が分らないのです。イギリス人にとって、ローズは一番誇りに思っている花だし、アロマテラピーで使われるローズオイルやエッセンスは本当に小さな瓶で売られていて、ものすごく高価で、香りも豊かで効き目も最高で、気の波動はものすごいものです。僕にはローズを外した理由がわからない。

 完全な薬であって、足すことも引くことも入らないというのならば、なぜこの3種類を入れないのか。

 38種類の中には、一年で一日しか咲かない花があるんです。しかも朝日が当たった時の一時間しか咲かない。彼は超能力があるから、その花が咲いているその日、その時、その場所に行ってしまいます。一年の始まり、一月一日に、「ああ、今年は3種類見つかるな」と予知してしまいます。こうして六年位の時間をかけて見つけていくんですが、そういうセンスが磨かれている彼が聖花のエネルギーをわからないはずがないのです。

  彼は死ぬ時にも、「ああ、俺は明後日死ぬな」と分って、自分の財産を整理し、人にあげてしまうのです。そして残っていたのは、ポケットに入っていた数セントと着ていた背広と靴だけ。

 そして、死ぬ前に38種類のレメディの作り方を公開することを決意します。1週間前には1万数千種類のレメディのレシピをすべて燃やしてしまいます。かれは超能力で植物さんたちと語り、「僕の花はこんなふうに使えるよ」とすべてが分っていました。これは胃腸薬になるとか、心臓病に効くとか。20年かけて作り上げたそういうレシピをすべて燃やしてしまうのです。

 バッチ博士を愛していて、いつも側にいて助手をしていた美しいノラウィークさんは、博士の死後に、引き継いで彼のレメディの作り方を残してくれました。今世の中で使われているのは彼女のおかげです。

 彼は38種類のレメディで、ガンもコレラもペストも治しているんです。感染症から慢性疾患症まで全部です。他に、難病やガンを治せるという他のレメディの発見があったのを全部破棄してしまうんですが、それは、その薬を飲むと病気が治ってしまうからと!おもしろい考え方です。

 でも、バッチ博士はこう言います。

 「病気が治っても本人は変わっていない。そうしたら、また同じ病気になるか、違う形で変形したその学習を体験するだけだ。すると、治るのは先延ばしになるだけ。だから、病気を治すだけのレメディは必要なく、すべての肉体の疾患は、上位構造である心を治すと治るはずだ」

 身体のヒエラルキー(階層構造)の1階は肉体です。2階が心。病気が体の疾患であるならば、色々な薬を使って、身体を治すことができます。だけど、体だけを治しても心が治らなければ、この治らない心によって体がもう一度だめになるだけなのだというのです。だから、人類が迷うので、体だけが治るレメディは全部破棄するというので燃やしてしまったのです。

 このエピソードがあるので、僕はますますロータスや菩提樹やローズを外した理由がわかりません。

 

(次号に続く)

 

2014年9月18日収録

文責:山崎佐弓

 

bottom of page